mahirunoyumearuki
水町綜助

道を歩く
たとえば都会の中の
南北に良く延びた
見通しの良い、ゆるい起伏のある道
道の両脇に少し、窪地のように
段差を持って民家の屋根が見え
ちょうど腰の辺りにゆれている鍵束の
しゃんしゃんと
ぶつかる音のあたりに
窓がいくつも開いている
アスファルトなんて
すでにぼくとしては
見たことのない歴史のようなもので
しかし黒く硬く
夏にはぐんにゃりと軟化するようなものが
若干の水分を染み出させるほどにはあたりまえ
遠く
遠近感をもって
どこまでもま隣を滑り進むような天楼群は
いつまでもそれを眺めて歩けば
やがてそれを中心に
迂回しているようなきもちに
なるわけもなく
だいぶ見慣れている

様々にしてパターン化したいろどりで
かすむほどに広がる街並のうえに
歩きながら
何かひとつ置いてみようか

大きな山ほどに
町境から港町までにかけて
ねている
スヌーピー
あおむけ


よく眠れ

ゆっくりと上下する白くやわらかな毛で覆われた腹
それを31階の窓からちらちらと眺めながらそろばんはじきをするといい
とおもう
なにがいいかはわからないけど

いまさら池袋サンシャインにじゃれ付く縞猫
「六本木は嫌い」
道路に垂れ下がった耳を自転車に踏まれたスヌーピー
むつかって寝返りうてば
すべてのマンホールから水が噴き出し
丸い蓋が噴水に浮かぶ
浮かび続け
まるでチョコレートクッキーのようにも見え
そうして散った飛沫に
虹が架かっているのを知り
道の両脇すべての窓から
働きに出ていない人々が顔を出し
太陽を背にして虹を見る
もう鍵束の音も耳に入らない
ぼくはその中を速やかに歩く
ぴっちりとした舗装路の下の土中を空想しながら
疑似天気雨も染み込まない
何十年も覆いつくされてきた土の中を
頭打ちで生き埋めになった蝉の幼虫を
黒い土の上を
手を振って
歩いた
道の先
澄んだ空気のさき
横断歩道の信号は青く
早くわたる必要があるようにおもえ
わたった先には人がいるようにおもえ
ぼくは冷たい空気を吸い込みながら
口の中やあと言う準備をしたゆめのようにあるいて



















自由詩 mahirunoyumearuki Copyright 水町綜助 2008-01-07 19:30:08
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