獅子舞
服部 剛
今年最初の日曜日
近所のファミリーレストランで
年賀状の返事を書いていた
筆を休める
ドリンクバーで入れた
緑茶をすすりながら
昨日老人ホームの
仕事始めで踊った
獅子舞を思い出し
ぼろぼろと涙が出てきた
今迄の
弱い自分を打ち棄てようと
祭壇から飛び降りた獅子の
顔を被った内側で
歯を喰いしばり
太鼓の音と共に舞う
( 獅子を囲むお年寄りが
( 息を飲み、見ている
着物姿の先輩が投げる
いくつものお手玉に
喰らいついては
地に転がる
獅子を脱ぎ
「 みなさんと素晴らしい一年を
つくりたいです・・・! 」
たくさんの皺の手で織り成す
大きな拍手の波が
暖かかった
一人ひとりのお年寄りを
家に送り終え
同僚も帰り静まり返った廊下に
今日被った獅子が
床にぺたりと顎をのせ
くたびれていた
更衣室へ通り過ぎるぼくは
しゃがんで(ありがとう・・・)
獅子の頭を手で撫でる
日中被った獅子の顔で
ひとりのお婆ちゃんを噛んだ時
赤い口の中にすっぽり納まった
白髪の頭を
撫でたように