獅子舞 
服部 剛

今年最初の日曜日 
近所のファミリーレストランで 
年賀状の返事を書いていた
筆を休める 
 
ドリンクバーで入れた 
緑茶をすすりながら 
昨日老人ホームの
仕事始めで踊った 
獅子舞を思い出し 
ぼろぼろと涙が出てきた 

今迄の 
弱い自分を打ち棄てようと 
祭壇から飛び降りた獅子の 
顔を被った内側で 
歯を喰いしばり 
太鼓の音と共に舞う 

( 獅子を囲むお年寄りが 
( 息を飲み、見ている 

着物姿の先輩が投げる 
いくつものお手玉に 
喰らいついては
地に転がる 

獅子を脱ぎ 
「 みなさんと素晴らしい一年を
  つくりたいです・・・!   」 
たくさんのしわの手で織り成す 
大きな拍手の波が 
暖かかった 

一人ひとりのお年寄りを 
家に送り終え 
同僚も帰り静まり返った廊下に 
今日被った獅子が 
床にぺたりとあごをのせ 
くたびれていた 

更衣室へ通り過ぎるぼくは 
しゃがんで(ありがとう・・・) 
獅子の頭を手で撫でる 

日中被った獅子の顔で  
ひとりのお婆ちゃんを噛んだ時 
赤い口の中にすっぽり納まった 
白髪の頭を 
撫でたように 








自由詩 獅子舞  Copyright 服部 剛 2008-01-06 23:00:46
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