海の記憶
小川 葉

海を見ると
懐かしさがこみあげてくるのは
きっと私たちが受け継いできた命が
すべてを知っているからなのだ

私たちの親が見た海
そのまた親が見た海
さらにおよそたどり着くまで
私たちの命の親が見てきた海が
このからだのどこかに
ひそやかに記憶されているのだ

それでも海しか知らない
時の思い出があるので
海はあかく染まりながら
とてもさみしい顔をする

そんなとき
どうするべきかも
私たちにはきちんと記憶されていて
隣で涙をこらえる愛する人の肩を
強く強く
だきしめるのだ


自由詩 海の記憶 Copyright 小川 葉 2008-01-06 17:59:22
notebook Home