過去に生きる人へ
mac

それはするりするりと手からこぼれる
砂のような
きらきらと

あの日
夕暮れ
影が長く
こちらに伸びて
顔は見えないけど

教室の古い板張り
汚くて傷だらけで
だけど僕らの居場所だった
苦しい詰襟もひとつはずすだけで
自由と感じた

新しい匂いはしないけど
そこは居心地がよかった
気がする

そのわりに抜け出して
怒られて残された
からかわれて笑って
そうして

夏が終われば来年の夏祭りの話をして
秋が終われば来年の秋祭りの話をして

この先それぞれ離れても
どこかでみんな元気で居るから
また同窓会なんかして
バカ騒ぎして

まるで昨日のことみたいに
思い出して笑う

そんな風に思ってた

どうしてそう思ってた?

思い出話で笑えるって

どうしてもうそれが出来ないって

そうなる可能性
考えられなくも無かったのに

大切な笑顔の中に
キミはもういない

自分の中で無くしちゃいけなかったものに
気付くのはいつもずっと後から

後悔しても仕方ないと
誰かが肩を叩く

あの教室に行きさえすれば
必ず居ると思ってた

自分が戻りさえすれば
きっと待っててくれると思ってた

あの日
キミの顔
いつか忘れてしまう
いくら掴もうとしても
留めることの出来ない時間の中で

それでも何度もすくい
何度も握り締めるよ

あの日
放課後
キミが
キミが
あの教室で
確かに
確かに
夕焼けをキレイだと
いった
あの言葉を



自由詩 過去に生きる人へ Copyright mac 2008-01-06 04:44:52
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