視線
森さかな

 
 
 
 
 
なんども あなたの口のなか
滑らかにうごく舌を目で追って
なんども あなたが左手で記していった
細い字を指でなぞったよ
 
 
 
だからこんなにも、目眩
 
 
 
強烈な閃光に
包まれていたような
身体の欠落感を補うために
走りだすイマジネーション
くずれてしまった
果実のパイみたく甘美です
 
 
 
 
(落とすように鳴らした
 ピアノの一音は
 あたしの空洞 に
 わんわんと響いて
 
 離れたくはないのだと
 こみ上げる涙と寂寥に
 真夜中少しだけ、
 つぶれた)
 
 
 
 
わかってるよ
この薄っぺらさ
 
ね、くずれていく果実のせんさいです
 
 
 
 
 
(あなたを見つめていると
 泣きながら笑いそうになって
 のどが締まって声もでないのは
 
 体から
 すべて溢れる気がするの
 いったいなにが?
 
 すごく矛盾しているでしょう
 きみの背中だけで苦しくて泣けてくるんだ よ)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


自由詩 視線 Copyright 森さかな 2008-01-06 00:22:38
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