君に向けて
海月

君との最後にしては満足できたのだろうか
今までの経験に比べたら上手に出来たのだろうか

君の呼吸は少しずつ深く遅くなっていく
微弱な鼓動だけが僕の手を伝い届く

「ありがとう」と唇が微かに動き伝える声
「さようなら」を言わないのは生きたいから

君の手を握り締めても帰ってくる温もりはなく
徐々に冷えていく身体に暖かい雨が降る

君の好きな曲を何度も何度も奏でるけど
同じ場所で躓いてしまい相変わらず弾けないまま

君の好きな料理を何度も何度も作るけど
君は一口も食べないから何が悪いか分らないまま

君の好きな事を
僕の好きな事を

君の時間は僕の後ろで止まったまま
僕はあれからどれくらい止まっていたのだろう

君の好きな曲も躓く事もなく好きな曲も奏でられるし
君の好きな料理も同じ味を何度でも作る事も出来るよ

君に向けて


自由詩 君に向けて Copyright 海月 2008-01-06 00:13:07
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