東北への旅 初夏の風
狩心
すれ違う為に生きてきたのか
言葉を重ねながら
体を重ねながら
折り紙の練習をしていた
焼き付いた肌
使わなくなった鍵は
給料袋の中に閉じ込めたままだ
全てを拒絶していた
その度に叫んだ
青白い光が血管の中に見えた
息を吸うとアルコールの匂いがした
意識を失う為に生きてきたのか
城はまだ原野に立っているか
鬼人の如く
柔らかい雲に跪きながら
鋭い肌が植物に話しかける
お前達はこの大地に何時から根を下ろしている
夜には肩を窄めて
昼には外貨を撒き散らしながら
陰と陽を一致させる為に生きてきたのか
語るまでもない事柄が
口の中で弾け飛ぶ
魑魅魍魎の声が
人々を救うように
二枚舌の中に育んだ命
その呼び名
地球外生命体の母船から
SOSと読める略語から
日本語の細部が抹消されるその時まで
「世界」と叫ぼう
身長は家の塀を越えなかった
竹馬に乗る子供が
パパとママから遠ざかった
住宅地の先にある
異次元の黒い口に向かって
消耗する為に生きてきたのか
再生する呪文を唱える度に
体の一部を売り払う破目になる
大好きなあの子に寄り掛かって
今日という日を投げ捨てた
履かなくなった月は
背中と脇腹の細部に
米神に似た急所を隠す
黄土色の肩が
小鳥の囀りを噛み潰す
触手は伸びている
親友の笑顔の裏側まで侵食する
鉛の銃弾としての枷は
引っ張る度に適度な快感のリズムを伴う
伴侶が失踪した山の麓で
小さな光を灯した宿が
来るはずもない客を待っている
大根おろしの中に
とてもとても健康的な
初夏の冬を感じた
痩せていくように
肋骨の警笛
老人の眼差しに
旅の終わりを告げる
歌を見た