陽炎
士狼(銀)


 桜

僕たちの最初の声が本当に欲しがったのは何だったのか
羊水の中で足掻く胎児は
魚類に他ならない
僕たちが生まれたとき
本当に欲しかったものは何だったのでしょう
どうして、
と問いかけながら
散る


 紫陽花

埋めました。毒殺してから埋めました。消せないメールに僅かに残して。
青色リトマス紙を赤色に変えました
押し殺した想いでも
誰かに
知って欲しくて


 曼珠沙華

水鏡
群生している紅花にいだかれ沈める青の反射を
川沿いに並ぶ緋色は
哀しい色だったのでしょうか
水鏡に映るのは
いつかの
面影


 六花

純白に乱れた雪の結晶が見せた幻「あの日」の童話
いつまでも純粋でいられるわけもなく
侵食された視神経が
伝えたもの
嗚呼
願わくば
陽炎、と
呼ばせてください



短歌 陽炎 Copyright 士狼(銀) 2008-01-05 15:04:41
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
戯言と童話