『蘇生』
東雲 李葉
君の目蓋が開く頃、僕は水に還るだろう。
そうして君の喉を潤し生きるための糧となりたい。
君が誰かの名前を呼ぶ頃、僕は雲となって漂うだろう。
そうして厳しい日差しから柔い肌を守りたい。
君が多くの目と出会う頃、僕は雨となって降るだろう。
そうして幼い君の瞳に幾つもの淡い光を見せたい。
君が熱い夏を迎える頃、僕は氷となって砕かれるだろう。
そうして君と愛する人を舌の上から冷ましたい。
君の命は決してどこかで終わりはしない。
幾重もの運命の輪を廻って循って、
やがてまた君は僕の一雫を小さな唇に含むだろう。
君が最期の冬を迎える頃、
僕は霜となって草木に降り立ち白い呼吸を見守るだろう。
君が最期の日を迎える頃、
僕は雪となって舞い降りて君の視界を染めるだろう。
君が最期の時を迎える頃、
僕は末期の水となり君の喉を潤すだろう。
そうして、君が物も言わない骨となり煙が空に還る頃、
僕は天から涙を流し再び地上に舞い戻る。
いつかまた、
君の喉へ、
肌へ、
瞳へ、
舌へ。
君の目蓋が開く頃、僕は水に還るだろう。
そうして君の喉を潤し生きるための糧となりたい。