真冬の鯉
小川 葉

やさしくされるたびに
真冬の鯉になってみせた
一番深い底のあたりで
ひげだけ動かして
じらしてみたりした

春になり
浅いところに出ると
やさしい人は
もういなかった
かわりにたくさんの人が
鯉を釣りに来ていた

少女の恋は
そのようにして終わった
次は夏に恋しようと思った
鯉のひげは去年より
たくましくたなびいている


自由詩 真冬の鯉 Copyright 小川 葉 2008-01-02 16:05:48
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