いちごみるく
緋月 衣瑠香

指先から奪われる熱
あなたは言った
『手を繋げば少しはあたたかくなるよ』

ひとり
駅のホームに佇む
お気に入りの音楽が
以前より深みを増した
でも
聴きたくてもきけない六曲目
聴いてしまったら
きっと

いちごみるくの飴
真ん中がいちごで
まわりをみるくが覆っている
今の私はそんな感じ
少しすればいちごにたどり着く
でも
まだみるくでいたい

鳴らない携帯の着信音
鳴るはずのない着信音
鳴らないことが一時の安堵
でも本当は

だって
あなたと約束したから
だから
この約束のためだけに
今は

でも
もしあなたに伝えることが出来るのなら
今すぐ乗り込もうとしている電車から降りて
今すぐ隣のホームに停まる電車に飛び乗って
あなたに伝えに行くから

いちごみるくの甘さ
それは
心の甘さ
以前よりまた一段と
甘酸っぱく
全身に広がってゆく

いちごみるく


自由詩 いちごみるく Copyright 緋月 衣瑠香 2008-01-01 20:25:46
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