ペダル
手乗川文鳥

情緒に問題あり、と
言われた、三者面談で
帰り道、お母さんが
泣いていた、自転車の
荷台で、情緒の意味を
分かりかねていた
テンイヤーズオールド


西日のまぶしさだけ
息が詰まった


ノートに書きためた、詩を
読んで、と言われて
読んだ、特に何も
思わなくて、黙っていたら
彼は、自転車を蹴ってった
わたしは、車道に転げた
セブンティーンイヤーズオールド


排気ガスの高さで
呼吸していた


どうしても、と言われて
酔った友だちに、押さえ込まれた
学祭で買ったばかりの、ピアスが
片方なくなって、翌朝
友だちは、何故いるのかと問いただした
ナインティーンイヤーズオールド


11月の歩道が
朝日を反射していた


陽動する、記憶を拡散して、もう一度固めたら、また同じになるだろうか、わたしが話さなかった言葉、為さなかった行為、砂壁に塗り潰して、まだ私は同じだろうか、(同じだろうな)、夏に海で泳がなかった、盗まれたのは青い自転車、線路が一瞬柔らかくなって、また正気に戻った、春が憂鬱なのは何故なのか、とか、考えてみてやっぱりわたしが悪いのだと納得する、優子ちゃんが折り紙を少しずつわたしの机から取り出していたこと知っていた、引き出しの中はハサミだけ、切るものなんかない、後輪と前輪が、刺し違える、サドルが真っ二つになる、


ありきたりな上京で、結局
病院通いになった、君は
死ぬなら止めないからその前に会いに来い叱ってやる、と言った
わたしは、
泣いたから、
死ななかった
トウェンティワンイヤーズオールド


自転車の後ろで
今も必死にしがみついている
しなやかな
背中


自由詩 ペダル Copyright 手乗川文鳥 2007-12-30 21:34:38縦
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