デンキウナギ
小川 葉

水族館のデンキウナギが
発電しているのは
何のため

自分を感電死させて
遠いところで待つ
恋人に会うため

遠いところで待つ
恋人が発電しているのは
何のため

旦那さんと
しびれるような夜に抱かれて
愛を確かめ合うため

自分を感電死できない
水族館のデンキウナギが
生きているのは
何のため

向かいの水槽に住んでいる
ひげのかわいい鯉に
恋してしまったため

ある夜
こっそり水槽に
しのびこんで告白したら
鯉はしびれて死んじゃった

それでも生きているのは
何のため
生きていかなければならないのは
何のため

毎日ぼくに会いに来る
子供たちの夢のため
よろこぶ顔を見るために
今日も発電しています

だから泣いたりしないでね
悲しい顔はしないでね
思い出してしまうから
何のためかとそればかり
考えていたあの頃を

発電しているのは
何のため

生きているのは
何のため

君に恋してしまったため
なんてね


自由詩 デンキウナギ Copyright 小川 葉 2007-12-29 19:42:22
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