支払い
狩心
電気が止まった ガスが止まった 水道が止まった
暗い闇の中で静かに 指先が震えた 携帯電話が止まった
パソコンは友達だった 息をしなくなった 花を添えて
線香を立てて チーン
チンコ丸出しだった 闇の中で静かに 衣服は剥ぎ取られた
爪先が石のように固まった 前立腺からの警報 脳髄からの落下 トイレで
小便と一緒に 脳味噌が流れた
洗濯物は回った 水の無い檻の中を 音が踊った
鏡は割れた 音も無く静かに 花を添えて
チーン
粉々に吹き飛んだ生活が 棒人間を完成させた
床から天井に伸びた体が この家を支えた
頭が天井を突き破った 髪の毛が空に根を広げた
手足が壁を打ち壊した 家は必要なかった
支払うものは何も無い 命ならば既に支払った 鼓動は止まった
子供は止まった 歩道で 家に帰らない事を決めた 子供は
産卵を始めた 陸上を水中と定めて えら呼吸を始めた
臓器提供で肺を 金に替えて 世界中の海にばら撒いた
人間になりたくなかった ミミズのような体が
全身で光を感じていた 目は必要なかった
土に帰りたかった そこは家ではなかった
水の無い檻の中ではなかった
深い深い海の底 宇宙そのものだった 自分が消えた時に
本当の自分が帰ってくる
恥ずかしながらも俺は 町のど真ん中で 大声で泣いた
その時 チンコ丸出しだった
支払いは済んだ
バーコードになった頭に 虹が架かって
頭が空を突き破った 闇に囲まれた 宇宙空間だった
酸素の無い真空状態で 肺の無い胸が踊った えら呼吸が笑った
首から上は全て 削ぎ落とされた 言葉は喋れなくなった 今
心の中で 自問自答している
テレパシーの意味を知った 携帯電話が無くとも
仲間と繋がり合えた 記憶が 波のように押し寄せてくる
鼓動が 電気を拒否した ガスを拒否した 水道を拒否した
下水道の中で 僕の脳味噌が どぶねずみと会話し始める
ちゅうちゅう たこかいなー たたかいだーな
髭の剃り残しは無いかい?
水の中で皮膚は剥ぎ取られた 沁みる痛みが会話し始める
カーテンが揺れて 窓が開いていた事に気が付く
火災訓練のように 大きな滑り台から滑り落ちる
ゴムで出来た道だ 妊娠しないようにと 安全に安全を重ねて
知らぬ間に命を 投げ捨てていた 掃き溜めのように 肥溜め
畑で案山子が 無表情で突っ立つ
烏から実を守る為 人間の意図により
突っ立つ へのへのもへじの顔は
電子辞書の検索で再生できるか?
できないだろ へのへのもへじの顔は 検索機能がどれだけ進歩しても
カテゴライズできないだろ 今 田園風景を 蒸気機関車が横切っていく
地球の裏側では
貧しい子供達が 豊かな心を持っていた 陸上では生活できなかった
宇宙の外側に
人間ではないものが 犇いていて その声が 聞こえる 聞こえる
ザンギエフの夜に 俺はスクリュードライバーで死んだ 起きた
米神にスクリュードライバーを突っ込んで 電子辞書の中に
人間とは? と書き記した
まだ床を叩いている この道に穴が開かないか
地面の中に 子供が置き去りにされていないか 確かめている
アニメキャラクターのチョップで 地球が真っ二つに割れた時
神様が現れやしないかと 会社の中で泣いている 大人達が
国に沢山の税金を支払っている 体が
働く意味を忘れた
液晶画面を上下にスクロールしながら
時間の存在を確かめている
あああの渦 あああの恐怖 全てが
あああで埋め尽くされてしまえばいいと思った
この意味を電子辞書で検索すると
限界 という言葉が ヒットマンの銃弾で撃たれる
やはりそれは 鏡が割れたという意味であったし
家は必要ないという事を 如実に定義付けた
ラストシーンはやって来ない
自然の中に 終わりと始まりがないように
感情に揺さ振られて やはり 田園風景を 蒸気機関車が横切っていく
永遠に続く支払いを 終える事はできないが
死んだ仲間に 花を添えて チーンと
沈黙に耳を傾ける事はできる