例えばひとつの夜の閉じ方
鎖骨
例えば 、と
突然呟く横顔
眠る前の畳まれる際のひとときに
ぽつと滴を落とす声が
真顔の鋭く曇りない瞳がそう言うので
言ったので私は
何が例えばなのだろうと思いながら
かの視界の端の端っこに入るように
音を立てぬように椅子をひき座って
受け入れてにこりと
笑ってみる
例えば 、に
続く言葉が届くまでには
たっぷりコーヒー一杯分の静謐が必要になることを
知っているから、こちらから訊ねることはせず
カップに机と唇を行き来させながら
似たような真顔を貼り付けて黙っている
そろそろ消灯から半刻
瞬きの他には一度南窓を見遣ったばかりの彫像は
ますます硬く乾いていくように
見える
焦げた海を飲み干したら
まあるい底が見えてしまい
どうしてかばつが悪くって
いたたまれない気分に染みたら
冷たさと眠気まで深く染みてきて
それなので
例えば 、を
継ぐために動こうとする口を
制して、意地悪くゆっくりと
明日はお出かけしましょうねと告げて
常夜灯を点けて毛布に潜った