田舎都市にて
葉leaf

光があまりにもがちがちに直進するので
光に邪魔されて動けない
と思ったら案外簡単に動けた
光は迂回することを覚えたのです

公衆トイレは人が用を足すところ
湿って秘密めいたところ
もよおしの切迫感がいつも響いているところ
でも実はただの建物だった
四角くて重くてのっぺりした
ただの建物

人の話し声がうるさい
イアーフォンから漏れる音がうるさい
だがそれらが空まで届いたことはあったか

僕が座椅子に座っていると思ったら
座椅子は床に座っていた
僕が布団に寝ていると思ったら
布団は床に寝ていた

自動車はいつでも元気に走っている
落ち込んでいるときはいつも
自動車から運動エネルギーを
摂取する

僕は建物だ
精密に設計された建物
だから体は堅固でとても動かせない
と思ったら案外簡単に動けた
どうやら手抜き工事だったようだ

電話がかかってくるが
電話の相手は無言である
海からの電話だ
魚がゆったりと泳ぐさま
プランクトンのつぶやき
光の具合について
海は静かに熱心に伝えてきた


自由詩 田舎都市にて Copyright 葉leaf 2007-12-28 14:17:44
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