残闇、抱きしめるときの
たりぽん(大理 奔)

(水槽から飛び出した金魚の体温)

煤けたような暗がりで
瞳が開いていく
洞窟の中をずっと迷っているような
コオロギの摺り足
夜には手が届かない
指先が触れる闇の境界線、それは
ひんやりと湿った壁つたいに
もう明日も今日もなくて、時折
消え忘れた鉱油ランプがおかれていて
それが、朝になり夕暮れになる
黄昏を美しいとはいわない
そのさきにある風を
煤けたような暗がりを
さまよっているから

時折の真昼を通り過ぎながら
夜が洞窟の別名となり
月のない闇が
生きている僕の産道になる

明日、生まれよう
明日、生まれよう

(汗ばんだ後ろ髪の匂い)



自由詩 残闇、抱きしめるときの Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-12-28 01:01:55
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