燃える大輪
山中 烏流

 
 
 
 
 
 
それは、浅はかながら
艶めきを晒している
 
狂い踊る群衆の隅で
一心に
咲き誇ったまま
 
 
燃える
 
 
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縁取られた瞳の
中心にあるものを
私は
花びら、と呼んだあと
火を放った
 
 
露が涙というなら、
花びらはいつだって頬だ
 
滑り落ちる跡は、いつも
なぞるときになって
消えてしまうのだけど
 
 
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指差した少女の肌は
すべからく純白であり、
褐色でもある
 
その先で
煌々と燃えている大輪は
やはり、群衆の隅で
咲き誇っていて
 
 
 (つみとろうとした
 (ゆびさきから
 (ほどけていくことを
 
 (わすれては、ならない
 
 
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乾燥を常とする、
その一端に露が現れ
気が付いたときには
ぼう、と
燃えてしまった
 
 
その艶めきは
密を背負う揺らぎだ
 
群衆の瞳が逸れる
 
それは、理解であり
気付かないふりなのであろう
、多分
 
 
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抱いた橙は、
いずれ灰となる
 
その名残に、
私は魅入られたのだ
確かに、魅入られたのだ
 
 
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群衆の隅で、
大輪が燃えている
 
その隅で、
何かが
息をしている
 
 
瞬いて、いる。






 


自由詩 燃える大輪 Copyright 山中 烏流 2007-12-27 02:27:44
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