燃える大輪
山中 烏流
それは、浅はかながら
艶めきを晒している
狂い踊る群衆の隅で
一心に
咲き誇ったまま
燃える
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縁取られた瞳の
中心にあるものを
私は
花びら、と呼んだあと
火を放った
露が涙というなら、
花びらはいつだって頬だ
滑り落ちる跡は、いつも
なぞるときになって
消えてしまうのだけど
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指差した少女の肌は
すべからく純白であり、
褐色でもある
その先で
煌々と燃えている大輪は
やはり、群衆の隅で
咲き誇っていて
(つみとろうとした
(ゆびさきから
(ほどけていくことを
(わすれては、ならない
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乾燥を常とする、
その一端に露が現れ
気が付いたときには
ぼう、と
燃えてしまった
その艶めきは
密を背負う揺らぎだ
群衆の瞳が逸れる
それは、理解であり
気付かないふりなのであろう
、多分
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抱いた橙は、
いずれ灰となる
その名残に、
私は魅入られたのだ
確かに、魅入られたのだ
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群衆の隅で、
大輪が燃えている
その隅で、
何かが
息をしている
瞬いて、いる。