首落ち椿のささめごと
朽木 裕

地面一杯に落ちた椿の中で
ひとり囁く者、有り。
群生林である椿は木の上にはもとより
私の足下まで赤で染め抜いていく。

生温い血溜まりに座り込んで
私は貴方の声を聴く。

「はやくはやくおちておいで」
「早く早く落ちておいで」
「早く早く堕ちておいで」
「ハヤクハヤクオチテオイデ」

ひんやりした土に耳がついてしまう程
しゃがんで貴方達の声を聴く。


つるべ落としの夕陽です。
首落ち椿のささめごと。


自由詩 首落ち椿のささめごと Copyright 朽木 裕 2007-12-26 20:48:58
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