年の瀬に
恋月 ぴの
お金や幸せを掻き込むという
縁起物の熊手
わたしの望む幸せとは
そんな熊手の上手から漏れた小さな幸せ
例えばそれば
何時に無く目覚めの良かった小春日和の午後
所在無いままに陽だまりのベンチで
冬の乏しい餌を求め冬枯れの芝生を跳ねる
野鳥の姿を認めた際に感じるようなもの
或いは
どちらとも無く音信を絶った
訳ありの女友達から届いた季節の便りに
その素っ気無い字面よりも
行間に女の艶らしきものを捜し求め
あれやこれやと按配しながら
ふと目を上げた先に去年の酉の市で買い求めた熊手
そう言えば強欲の意味もあったはずと
首をすくめた自らの姿に恥じ入るようなもの
人並みな成就など願をかけてみたのか
居間の整理ダンスの上には
埃を被った片目の達磨がひとつ
このまま年を越すことになるとしても
新たな年を迎えられる僥倖に勝るものなしと
百八つの鐘の音に心打たれることも無く
早々に夢うつつとコタツで寝入る
わたしの望む幸せとは
そんな絵に描いた餅を食べる小さな幸せ