「旧日」
菊尾


今日は綺麗な日
鳥だって飛ぶのを止めて見惚れてしまう
見たこともない何重もの輪が溢れて
君も僕も体が白く包まれていく途中

そんな事だって過去になるけど
明日までの距離はもう無いみたい
あれとこれって切り揃えて並べたい
銀色と冷たい感触
君はテーブルの上を整えている
僕は読みかけの本を書棚に収める

どこに居ても
声は無力で飲み込まれるだけだから
口を開かず、そつなく動く
もうすぐ訪れると分かっているから
当たり前の事を意識せず
こなしていくだけ


透けていく食卓
食器の音も聞こえない
椅子を引いて水を汲みに行く
水滴が手についたような気がした
座っている君の髪が半分ぐらいにまで透けている


全ての事に逆らってどこまでも行きたいね
叶わない日々を夢見ながら
部屋は満たされていく
その世界での呼吸の仕方を知らない僕らは
「さようなら」と言って
手を繋いだ


自由詩 「旧日」 Copyright 菊尾 2007-12-26 17:46:08
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