Born 
服部 剛

今から40年前 
モノクロームな戦後の昭和
素朴なふたりの物語  

たまたま
男は人の紹介で 
ある会社に入り 

たまたま 
女は求人広告で見た 
ある会社の電話番号のダイヤルを回し 

たまたま 
同じスタッフになった 
ある日の現場で 
女は作業中に 
悪戯に滑ったカッターで指を切り 
男は(可愛想に)と 
血の流れた指を手に取り 
絆創膏ばんそうこうを貼った 

数日後 
銀座の「 天国てんくに 」という 
天麩羅屋で待ち合わせて食事 

数ヵ月後 
教会の祭壇前で 
指輪を入れる 

数年後 
ふたりの間に 
ぼくは生まれた 

さかのぼれば 
枝分かれする奇跡の糸を遥かな過去へと
張り巡らせるように 
数え切れぬ 
たまたまの歴史は連なり 

男と女があの日出逢わなければ 
いなかったはずのぼくが 
若き日のふたりを追い越した年齢としで 
( 今・ここ )に 

息をしている 








自由詩 Born  Copyright 服部 剛 2007-12-25 21:07:10
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