キリン舎
kaori*

見上げる瞳には
鉛色の空
閉園を告げるメロディが
流れ出す頃
キリン舎は空っぽのまま

僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた

キリン舎では
母と子が
桃色の夢を咀嚼している
僕らのかわりに
平原の風に吹かれている
赤いスモッグが揺れて
もう帰らなくっちゃ 

君は呟く

僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた

子どものキリンが母を呼んでいる
僕らは目撃する
彼方へ向けられた瞳から
薄紅色の涙が流れていくのを
君は
小さな祈りを手のひらへ

僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた

母と子の温もりだけ残して
雪のひとひらが
そっと
キリン舎に
さよならを告げる

僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた

さよならの言葉をたくさん知って

僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた

僕ら いつのまにか 大人になって
優しい瞳を 置いてきた







自由詩 キリン舎 Copyright kaori* 2007-12-24 21:35:18
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