たまきの実験
エチカ


フランスの実験映画のようなフラスコの中で揺れ
る白い寒い夢のような終りにはこれからつづく永
遠に似た狂おしい淋しさがあるんじゃないかしら
とたまきはいってちっぽけな不条理を手のひらで
ビー玉のように転がしている。

巨大な静寂は棺の中で神経たちの亡骸に姿を変え
青白い花畑の中で埋葬されて立ち尽くし、オルフ
ェの悲観を横目にユウリピデスの感受性を育てた
小屋の中で黒と白のquaggaに食い殺されてしまい
またそこで浮遊することにする。

石畳の上り坂の途中に夢見るシャンソン人形がこ
ちらを向いてバーキンのバックを殴打しているの
とたまきはまたいって黒い人力車で小雨の降る雨
の中でキセルの灰砂をかん、と落としている。

ガラスの外で冷たい透明の反射の水滴が光にゆれ
ながら傘を差している紳士淑女の皆さんよろしく
シーツのしわのたわみに身をゆだねているとモン
パルナスのキキが赤ぶどうのワインを口移しで注
いでワルツを踊る。

わたしったらまだ沸点をしらないの。などとくら
げのように漂いながらシーツにもぐり唇をまっか
に染めながらたまきはうすぼんやりとほほ笑んで
主の体温を染める。

乳白色の憧れが警鐘を鳴らしているのがみえてシ
ュルレアリスムで再現しようとあらゆる手法をこ
らしてゆすってみせる世界の中でたまきはえもい
はれない空白の弾力をおんなを使って描いてみせ
るわといいながら遠くのフラスコできのこ雲の実
験をしている。



  ぱりん



ひどい異臭騒ぎでおんなどもが揺れ動きながらあ
ざやかに乱れ狂い夜に割れてしまってたまきの実
験は終わったかにみえたけれどビー玉の中で人知
れず深い夜が始まってしまっていてオーケストラ
が夢のようなおんていをとってんかてんと繰り返
したまきはまた実験をくりかえす。


何度も繰り返したたわみの夜に長い幾許の小雨を
嫌がりシーツに包まりすりりと肌を寄せてはみた
が哀に満ちた夜はまだこないのでたまきはふうう
と頬杖ついて狂おしい主にキスして眠る。






自由詩 たまきの実験 Copyright エチカ 2007-12-23 18:54:06
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