カリカチュア・『X'mas』
しろう

深い藍を伴った夕霧は
街のそこいら中の路地に馴染むように
私の手のひらの温度をさらった
ルリスズメダイの色だわ
きっとルリスズメダイの鱗の淵なのね

*

街中のイルミネーション
青と、黄色と、赤と、緑で
いつも見詰めさせられる
腐臭のする街灯の影から
目をそらせるためにあるんだ

*

そう私、プレゼントを用意したの
きっとお気に召すと思うわ。
だってこんなに寒いんだもの
赤くて、
でもまだ内緒ね。

*

今日はカソリック教会が
メサを開いているみたい
賛美歌が聞こえてくるの
赦しを、受け入れてもらいたいわ。
あなたにも、赦しを。

*

ねぇ、
兄姉ってなんかいいと思わない?
私、あなたと兄姉だったら
もっと愛せていたかもしれない
いいえ、もっと愛されて。

*

ルーベンスの絵がね
見たかったと言ったら
可笑しいかしら
今年はモネ展には行けたから
ネロは少しだけ満足です

*

聖夜が近いわ
裸足で飛び出さなきゃならなかった
家族を知らない少女がいても
聖夜は聖夜、
誰かを守ろうとはしないの

*

あなたが私を救えたと思って?
いいのよ、救ってくれなくたって。
私の足で一番おいしそうな太腿から
食べてしまって。
誰だって誰かを救いたいと思っているの。

*

ああ、雪って私、大好きなの。
色んなものを覆ってくれるでしょ?
見たくないもの、
醜いもの、
私も雪に隠されて

*

今年はきっと良いクリスマスだわ
クリスマスに良い悪いがあるかなんて
私の知るところじゃないけれど、
そんな予感がするの。
鉛の心臓がそれを告げるの。

*

ねぇ、許してね。
この幸福の代償が、
たとえどんなものであるとしても
私は受け入れるつもりがあるわ
だから、許して

*

抱きしめて。
肺と肺が繋がって
おんなじ空気を吸えるくらい
明日が雪かなんてホントは知らないの
だから今夜、掻き消して。







自由詩 カリカチュア・『X'mas』 Copyright しろう 2007-12-23 01:02:50
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