素敵にしてやる
しろう
寒い
寒いぞ
冬
暖冬はいとよろしうない
冬なら寒けくこそあらめ
俺の関節はブリキのギアで出来ているから
油が冷気で固まり落ちて
ギィギィと音を鳴らす
おまえが深海で酸素が足りないと嘆くなら
俺がそばまで沈んで空気をやろう
海の底の暗闇でキスをする
俺の目玉はヒノキを丸めて作ったから
黒目はまるでのっぺらなラクガキで
少しだけ世界が色褪せている
おまえが天空へかなしい雲の翼を喘ぐなら
俺が飛べない羽根をうたってやろう
空の底のひだまりで名を呼ぶ
望むなら
おまえの世界を素敵にしてやる
この心臓にちょいと喝を入れれば
この肺胞が生み出す空気で
おまえを素敵にしてやる
寒い
冬
だから
かなしみを吹き消して