素敵にしてやる
しろう



寒い
寒いぞ


暖冬はいとよろしうない
冬なら寒けくこそあらめ


俺の関節はブリキのギアで出来ているから
油が冷気で固まり落ちて
ギィギィと音を鳴らす

おまえが深海で酸素が足りないと嘆くなら
俺がそばまで沈んで空気をやろう
海の底の暗闇でキスをする

俺の目玉はヒノキを丸めて作ったから
黒目はまるでのっぺらなラクガキで
少しだけ世界が色褪せている

おまえが天空へかなしい雲の翼を喘ぐなら
俺が飛べない羽根をうたってやろう
空の底のひだまりで名を呼ぶ


望むなら
おまえの世界を素敵にしてやる

この心臓にちょいと喝を入れれば
この肺胞が生み出す空気で

おまえを素敵にしてやる


寒い


だから

かなしみを吹き消して




自由詩 素敵にしてやる Copyright しろう 2007-12-22 23:16:54
notebook Home