むかし、むかし、
三奈



「そんなこと、あったっけ?」



嫌ね、忘れてしまうなんて

時の流れに負けてしまったかしら?


それとも新しいデータに支配されて

過去のデータはデリートされた?


嫌、嫌よ、そんなの



「ちょっとまってて!」



証拠の写真を見せようと、

引き出しの中をひっくりかえした。


あれ、ない。ない。


どこにしまったっけ?



どうやら私の脳でも

記憶のデリートは起こっているようだ




「おもい、だせないね」




君が覚えていなくても

私は覚えているから

写真はないけど、証拠はないけど


確かにあった、あの海

覚えているから


あの言葉、覚えているから


時の流れなんかに負けずに

新しいデータなんかに負けずに


よぼよぼのお婆ちゃんになっても





だから





「おもいだしたくなったら、ここにおいで」




遠い遠い昔話を

聞かせてあげる


自由詩 むかし、むかし、 Copyright 三奈 2007-12-21 22:50:53
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