湖にロボット
ふるる

静かな水面を犯す
色あせた小船
風に運ばれ
流れ

中ほどで止まり
つっと少女が生え

東雲の空を仰ぎ
湖に
か細い背を預け
ざばん


透明なほのお飛び散り
幾多の波紋生まれ
うたう

軽くなり小船は
踊りたそうに見えたが

うたはかき消え
水面はまた
蜜をかけた葛のように横たわった

一振りの剣
光が差し込んだばかりの夜明け
するどい切っ先は草をなぞり
なぞられて見える
はっきりと緑の
緑の、緑の、みどりの
とろりとした岸辺

岸辺にふちどられた湖は
明るくなる
雲、空、を食べていく

白い服ゆらめく尾びれ
沈む
少女のやわらかな外皮

(彼女の泡だった手のひらから)
(祝福しきれないものが生まれ続ける)

湖は少女を飲み込んだので
午後の食事はもういらない
と言う

それからほどなくして
「ヒト型ロボット取扱説明書」が
楽譜のように浮かび

「絶対に水につけないで下さい」

印刷の文字は
水面に空にほどけ

湖にロボット

あおいくろい水底に
水草は茂り白い花も咲く
魚は巡り命のやりとりが始まる
少女の身体は沈み続け

そんなうつくしいこと
そんなかわいそうなこと

誰も知らない





自由詩 湖にロボット Copyright ふるる 2007-12-21 11:22:35
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