胡瓜5本
小川 葉

老婆は
朝市で売れ残った
5本の胡瓜のうち4本を
田んぼの用水路に捨てた
4本のうち1本を
散歩中の老爺が川で拾った
老婆のきょうだいの老爺は
翌日老婆と一緒に
ふたり仲良く胡瓜を
1本ずつ食べた
残りの3本の胡瓜を
懐かしむように
残りの3人のきょうだいについて
語り合った
ふるさとの家の庭で
1本しかない胡瓜を
5人で分け合って食べた
思い出について
話し合ったけれど
きょうだいが胡瓜に生まれ変わるまでに
5人全員が揃うことはなかった
その頃、父と母は
ヘチマに生まれ変わっていた
5人の目には
とても大きな胡瓜に見えた


自由詩 胡瓜5本 Copyright 小川 葉 2007-12-20 03:13:33
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