帰還
渡邉建志

 
線路を歩いた
草がたくさん生えていた
誰もいなかった
ずっと前に廃線になったのだ

線路沿いに坂を上っていくと
車両が置き晒されていた
子供が廊下を走っていた

もう少し歩いていくと
町を見晴らす高台の公園があって
地球儀のジャングルジムが回っていた
誰が回して行ったんだろうか

町を見下ろす銅像があって
足元のベンチで恋人たちがくちづけあっていた
5分ぐらい見ていたけれどずっとくちづけあったままだったので
彼らも銅像だったのかもしれない

さらに歩いていくと細い山道になった
右を見れば深い川が速く流れていた
左は崖で5メートルほど下にくろい土が見えた
落ちたら死ぬなと思った
 
 


自由詩 帰還 Copyright 渡邉建志 2004-06-17 10:51:22
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