好きに名づけてくれ
鎖骨
風に問う前に
石について知れ
幼きうちによく走れ
裸足の土踏まずで草に口づけて
幼きうちに思うまま遊べ
そのときにしか出来ぬことが知れるのは直ぐだから
みだらに歌うことなかれ
たとえそのみこころ寂しくとも
牧歌は牧童のためのもの
聖歌は教徒のためのみにあり
情歌は溺れたがりを招く底なし沼
賛歌は触れられすぎて手垢に塗れる
みだらに歌うことなかれ
唯流れていたはずだ
音楽と呼ばれるものは
閉じ込めたくない
名前をつけたり、繰り返したり
したくない
のに
だけど音は選ばれる
選ばれてしまう
絵も建築も
何もかも
それから称えられる
銘
をうたれてあちこちで
その名前が語られるようになる
宿された魂が消沈していく
それらを見るものの見えないところで
金が積もる
人が澱む
人で澱む
エゴ自己愛がこすりつけられて
一方的に迫られる
象徴化され
神格化されたりする
夜
暗くなっても私は仕事をしている
それを客観的に見てみたい 想像するのではなく
朝
明るくなっても私は書いている
つなげたり離したり削ったり伸ばしたりして
動力が失われて続けられなくなるまでそうしていられたら
自動式タイプライターよろしく綴りつづけるそれの
吐き出し続ける詩篇で六畳間はいっぱいになって
いずれ窓から玄関から排水溝からあふれて外に私を伝えるだろう
風化する前に残骸は物好きな資産家に嗅ぎつけられ
石膏を飲み過ぎた女、あるいは男として
防腐処理されてから
美術館に展示される