独身寮
beebee



夜のカンバスの上に
ぼくは一本のボールペンと
一枚の紙を置く
そして
そこに言葉を書きつける
一行 一行
言葉を積み重ねていく
それがぼくの仕事であり
独りのぼくの慰めなのだ
ぼくはボールペンと紙を持ち
寮の中を歩き回る
一部屋一部屋に人がいて
一部屋一部屋想いがあり
一部屋一部屋に悲しみや痛みがあり
あふれる喜びや歌がある
独り
真夜中の道化師
スリッパを脱ぎ
靴下を脱ぎ
素足のままで
寝静まったコンクリートの中を歩く
闇へと続く螺旋階段
ぼくは銀行員
明日の朝までに
下へ降りきっていられるだろうか
ぼくの部屋は509号室
ぼくの名前はT.T.
緑の扉に緑の縁取り
赤いインクで書かれてある
醜い似顔絵の扉を開けると
独りのぼくがそこにいますよ


自由詩 独身寮 Copyright beebee 2007-12-14 21:27:43
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純情詩集