ふゆの空蝉
銀猫

灰色に曇った窓の雫を
つ、となぞると
白い雨は上がっていて
弱々しい陽射しの予感がする

こうして朝の死角で透けていると
ぬるい部屋全体が
わたしの抜け殻のようだ

だんだんと色が濃くなる風景を
ぼんやり眺めていると
遠くで、近くで、
音がひとつずつ生まれ
朝陽のタクトを合図に
シンフォニーを奏で始め
わたしの透明をよそに
今日を連れてくる

冷たくなった指先を唇に押し当て
時が止まるように
淡く願ってみるのは
わたしのなかにも
誰かの抜け殻があるせいなのだろう

重なり合う音階に混じって
一瞬、
から、ん、と鳴った

わたしの空は
そこらへんにあるのかもしれない





自由詩 ふゆの空蝉 Copyright 銀猫 2007-12-14 11:58:54
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