ふゆの空蝉
銀猫
灰色に曇った窓の雫を
つ、となぞると
白い雨は上がっていて
弱々しい陽射しの予感がする
こうして朝の死角で透けていると
ぬるい部屋全体が
わたしの抜け殻のようだ
だんだんと色が濃くなる風景を
ぼんやり眺めていると
遠くで、近くで、
音がひとつずつ生まれ
朝陽のタクトを合図に
シンフォニーを奏で始め
わたしの透明をよそに
今日を連れてくる
冷たくなった指先を唇に押し当て
時が止まるように
淡く願ってみるのは
わたしのなかにも
誰かの抜け殻があるせいなのだろう
重なり合う音階に混じって
一瞬、
から、ん、と鳴った
わたしの空は
そこらへんにあるのかもしれない