待降節
池中茉莉花
あなたは胎児であって胎児ではないのだから
産み落とされる瞬間に触れる空気の冷たさも
これから始まる三十余年に渡る苦しみばかりの人生も
そして 嘲り笑う人びとの眼前での 磔死も
既に全て知っている
あたたかな羊水から泳ぎ出る
その日
わたしは どのような顔をして あなたを迎えればいいのですか
見渡せば世界中に十字架上のあなたが満ちあふれていて
あなたを 笞撃ち、唾を吐きかけ、罵り、切りつけ、焼き尽くす人びとの片手に
聖書が握られている
あなたの名前を語りながら
あなたを殺していることに 気がつかないのか
嗚呼、あなたの誕生を祝ってもいいのでしょうか
こうして悩むわたしもまた この瞬間も罪を重ね
あなたを殺して 生きているのに