待降節
池中茉莉花

あなたは胎児であって胎児ではないのだから
産み落とされる瞬間に触れる空気の冷たさも
これから始まる三十余年に渡る苦しみばかりの人生も
そして 嘲り笑う人びとの眼前での 磔死も
既に全て知っている

あたたかな羊水から泳ぎ出る
その日

わたしは どのような顔をして あなたを迎えればいいのですか


見渡せば世界中に十字架上のあなたが満ちあふれていて
あなたを 笞撃ち、唾を吐きかけ、罵り、切りつけ、焼き尽くす人びとの片手に
聖書が握られている

あなたの名前を語りながら
あなたを殺していることに 気がつかないのか


嗚呼、あなたの誕生を祝ってもいいのでしょうか

こうして悩むわたしもまた この瞬間も罪を重ね
あなたを殺して 生きているのに


自由詩 待降節 Copyright 池中茉莉花 2007-12-13 10:59:38
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