水辺で見た夢のこと
猫のひたい撫でるたま子

静かで音ひとつしない水辺に座る

木のベンチは既に湿っていて私の体温を脅かす

平らな水の広がりは午後二時の強い日差しを受けて黄金に輝く鳥たちのための道

雨が降ってきて、それを見届けようと硬くなったチーズパンを無理矢理かじる

私の柔らかいかみの毛は徐々に雨の雫におおわれて量を増す

目に映る範囲よりもさらに広大な水たまりに目をやると、雨の波紋は見えず、飛び上がった水しぶきが音楽を奏ではじめる

テレビが終わったあとの残存のように一定の乱雑さでメロディーは弾かれて、
枯れた夏の線香花火が終わる寸前の華やかさを迎える

いまの景色を記憶に残そうか迷う間もなく、

ふと触る私の首筋には髪の毛一本分ほどの細さの切り傷ができていた

指先についた赤い血と日差しを浴びて黄色くなった雨を混ぜ合わせたら、音楽は
消える

雨は急速に上がり、地面の模様も空も当たり前に戻った

いつもの公園に人は私だけではなかった

目を合わせることなく、確認をし合わずに心の内で思っている

私にもあなたにも同じように、いまの終わりの音楽が聴こえていたと





自由詩 水辺で見た夢のこと Copyright 猫のひたい撫でるたま子 2007-12-12 22:59:47
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