火のついた家の中で(習作)
月見里司

(となりのとなりの家に住んでいるきれいな
お姉さんは、ぼくのことをさんざん好いてく
            れました/けど)

ニュースは電車沿線での火災を報じていた。死者は一名。全焼した民家の二軒先から、焼死体が見つかったということで事件・事故の両面から捜査がなされることが決定していた。

お母さんが火をつけたから、ぼくの家はめらめらと燃えている/ました。
本当に赤い。真っ赤です。直立しているから、こっちを見ているお母さん
     のほうに、声を向けてはいけないのです/とっても、悪い子。
(ぼくは悪い子です)
あ、見てください。時計の短針がぐんにゃりとゆがんで、
秒針はひとり立ちしました。たった今、止まったところで
        す。メトロノームはまだ、ありますか?

人形が踊ってる。踊ってます。もともと赤
髪だったのに、もっと赤く、ジュウタンみた
  いになった畳の上をまっすぐに/、ね。
醤油、こぼしてしまいました/悪い子です。
    (お父さんが叱りにきてくれない)

雨の中の火事は大概悲惨なことになるという。気温が10度を下回る寒い日の火事であったにも関わらず火の勢いがやまず、消し止められたときにはすでに、綿の焦げるような匂いが辺りに充ちていた。焼け跡からは大量の縫いぐるみが見つかる。


//2007年12月10日


自由詩 火のついた家の中で(習作) Copyright 月見里司 2007-12-11 09:55:05
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