モノクローム・レッド
榊 慧



モノクロの極彩色に手を沈め感じるままに朱の月

白と黒そしてそこにはひとつ朱彩りのある世界を望む

パサリパサリと散りゆくは解いた朱の花になりけり

魂の欠片ごと一片も残さず食いちぎれ吹き出るは朱

羊水の記憶の中に朱の空小さい其れは今でも根付く

名残の緋ズクリと痛む純色の黒の中にも飛び散る朱

朱だけは誰のものにもなりはせぬ奪ってやると誓ったのです

指先が染まり垂れゆく血液の濃度の高い朱がちりりと

淑やかに大砲巨艦主義の朱俺の左目止めてください

黒ばかり白ばかりだけ単調な視野に潜むは妖艶の朱

白い紙黒い墨とが朱の火でちりりちりりとワルツを踊る

助けてと叫んでみても響かないそんな所に魅惑の朱が




短歌 モノクローム・レッド Copyright 榊 慧 2007-12-10 21:04:42
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