認知
こしごえ




夜のアスファルトに響く
女の足音は 毎夜何をしに来るのだろう
その足音は 決まって必ず湿っている
扉のまえで それはピタリ
と止まり
重いけれど圧力のまるで無い
気配のまま夜明けまで佇んでいるのだ
私はここのところ睡眠不足でいるのだけれど
不思議と冴えている

なぜ『女』なのか
それは
あのころの私なのでは
と感じる からだ
その時
私は
〈ある思い出〉を海へ流してきた


その昔)
海の波に静かに、ゆれる目差を
大きく音も、なく歪めてしまってから
白白と、しろい
ゆび、さきで空(というくう)を切った
軌跡がこだま、していって
切れ目から 未来製の面影が
生んだ無影灯による
真空中の電磁波は
そ、の海を素手で眺望しつつ去って、来た


零雨にかわりましたわね
私がささやき
そうですわね
扉の むこうでこたえる
そこ に居るのは 私ではなく
ある気配なのでありましょう

(ある、日の今日
この扉のあく時が、せまっていると、し、る









自由詩 認知 Copyright こしごえ 2007-12-10 16:41:32
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