Jazz and Blues
恋月 ぴの
ジャズアンドブルースはムードなんだよ
たばこの煙を吐き出しながら
あのひとは言った
ちょっと吸い過ぎなんですけど
その背景に何があろうとも
あったとしても
そんなものとは切り離されて
マイルスのジャーズィなペットは
おしゃれなカフェの雰囲気を盛り立てる
それでもヒップなソゥルがないとね
ニーナのハスキーなボーカルに
ちょっとこころ揺さぶられたりして
フォービートを刻む指先に恋をしてみる
ねえ、口に含んでもいいかな
手入れなんて知らない親指は
訳もなく口寂しかった幼い頃の味がした
程よいセンチメンタル
そいつがキモってことかな
感情に溺れてしまったら何も見えなくなる
わたしのこころを見透かしたように
時計の進み具合なんか気にしてみせたりして
それでも、わたし溺れてみたい
節くれた親指の確かさだけでは満たされ得ずに
涙が出るほどに息の詰まりそうな
自制心などかなぐり捨てたくなるような
唾液に濡れた親指を舌先でなぞり
付け根を彩る口紅は縁飾りのようで
ブラッド・スエットアンドティアーズ
血と汗と涙
自立した作品になるってことは
そんなものとは切り離されて
デートの添え物になることさえ拒まずに
トイレにでも行ってくるね
西日のあたる窓際の席を立つとき
あのひとの視線をお尻あたりに感じ取り
勝負なんとか穿いてきたっけ
だなんて
スカートの腰のあたりを軽く押さえて