◆ふゆの花びら
千波 一也



水晶を砕いてください船底でふゆの花びらかくまうように






捨ておいた言葉に幾度も拾われて星座のたもと鋭角を知る


閉じかけた波音の日がよみがえる月の鏡の無言を浴びて






祈らない実りは疑う余地もなくささやかな火を吐く息に見る


かじかんだ定義をひとつポケットに駆けぬけてゆけ、薄紅の暮れ


ぬくもりは列車の窓を曇らせて水のいのちの線路は続く






いつかまた、続きを忘れかけた頃、指先に降る雪の一文字



沈黙を奏でることの楽章に身を寄せている街路樹は、ただ






望んでも望まなくても枝わかれ風の重みを細々と聴く






手紙にはなくした文字が燃えている風に急げばなお煽られて


むずかしく思う隙間に粉雪は生まれてきえる安らかな船


花の名を探しあぐねて海底は研ぎ澄まされる、ふゆの訪れ






もどかしく香りに揺れて十二月、名前はいらないふゆの花びら













短歌 ◆ふゆの花びら Copyright 千波 一也 2007-12-09 11:31:46
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【定型のあそび】