アーク
鴫澤初音
「恋ってなに」
飛べるもの?
恋人って
なに、
あなたと一緒にいる のに
私の内に続く
違う
面影
日曜の緩い
墓場を
ともに歩いたあの人の 背中に
取り憑いた 私 いつまでもその、
まま、
結婚しよう、 あなたは渇いた唇で
ゆっくりと咽喉を鳴らして言う
いいの、
私 あなたのこと
絶対だなんて思えない
「結婚ってな、
一緒に仲良く暮らせていけば
助け合って生きていけば
それでいいんだ」
眼が
死んだみたいにこっちを見てた
そうやって 笑わないで だって
それは あなたの定義
そっと
無言で
墓場から出て 私たちは
高台の 無人駅へ
見渡す限り、緑
むせ、返る
(ねえ)
(忘れる ためには)
(死ぬしか ないの)
(誰が?)
(どっちが・・・?)
自動販売機の横で
あなたはセブンスターに火をつけて
それから震える5本の指を結わえて
煙を吐きました
蚊取り線香みたいだと思った私は、
か細く
悲しい、
と 言って、
――そう 言い、