かたちづくる もの
鴫澤初音

  ぽきぽきと折れていく 足


  友人たちがしんどいと言いながらも 確かに生きているように
  私は道を歩めなかった 
  皆 ゆっくりだらだらとそれでも疲れた顔を上げて
  走っている
  川辺は緑が茂って 川面に鳥たちが羽を休めてとまっていた
  幾本もの足が交差して 動いていた その上に
  友人たちの 美しい顔 

  恋人との一年半続いた交際
  分り合えたとか分り合えなかったとか そんなのどうでもよくて
  ただ心が休まった それでも 
  これからもずっと一緒に生きていくとは 思わなかった


  いつも考えていた ―――


  何か聞いたこともない音がする
  消えてしまいたい 嘘に嘘を重ねて 崩れていく
  些細なことが心苦しい 詰らないことで泣く
  君に会いたかった 恋人でもないただ君に会いたかった
  
  君に会えば何か変わるのかな 
  ううん、そんなことないけど ないと思うのだけど
  君の温かさや優しさが掬ってくれるのかな
  死にたい ああ もう つらかった つらくて
  どうすれば色んなことがうまくいくんだろうね
  知りたいよ 君はどうやって生きてきたの
  ねえ もう両腕は何も掴めないんだけど 
  君はそれでいいのかなぁ

  
  真っ直ぐだった道が歪んでいた
  愛すれば愛するほど心苦しかった
  新しいことを何一つ考えなかった
  
  死んで償いたかった 彩る全ての人に謝りたかった
  人を傷つける 人を 失望させる
  何を信じたらいいのか わからなかった
  
  胸を詰らせる 一言

  ずっと考えていた

           
           「君は あの人のことが好きなんだね」

  胸が痛い 
  わからないとしか言えなくて
  
  恋人とはうまくやってきた でも心苦しいこともなかった
  ここにいなくて淋しいとは思わない 
  自分には何か欠けているんだろうか


  誰をどうやって愛せばいいのか見失う
  悲しみが立ち尽す
  愛すれば切なかった
  息をすれば泣きたかった
  
  どうやって生きたらいいのかわからず
  立ち止る 中 簡単だと思っていたことが
  できなくなっている

  君が私を愛してくれる理由なんてない
 
  巻き戻したい

  
  しんどい

  もう 君が生きていく理由にならない
  巻き戻したい
  巻き戻したい

  時計の針

  秒針 動いている 動いていく

  巻き戻したい


自由詩 かたちづくる もの Copyright 鴫澤初音 2007-12-08 00:35:47
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