不安旋律に嘆く
森さかな

 
 
迷宮入りの
記憶に住む風景は
微笑む理由を
教えてはくれない
 
 
赤い炎すら
つめたさを流すから
ほろりと笑った
きみが寂しい
 
 
塀に沿って歩く
怖いのは顔のない人々
道端で探す
光はくすんでいるのだ
 
 
つよい、感情すら
醒めてしまうから
頬を伝った
涙の寒さも知らない
 
 
いくら刻みつけても
消えてしまうから
 
 
写真のなかの
微笑んだぼくたちは
死んでしまって
きっと蘇らないことを
 
 
追いかけてくる
時間から
逃げきれないのだと
 
 
 
わかってよ
 
 
指から去る砂を
泣かないでよ
 
 
 
 


自由詩 不安旋律に嘆く Copyright 森さかな 2007-12-05 21:46:02
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