たべる
小原あき
明日のための『今』を食べる
『今』を吸収した体は少し古くなり始める
古くなる体を抱えて、明日の続きに怯えたり、期待する
明日の続きは死へと確実に繋がっている
一つの歯車が錆始める
きゅるきゅる、と音を立てる体
油の行方を知らない
生まれたての頃は油が黄金で
飴みたいに甘かった
きゅるきゅる、と音を立てる
音楽をひとつ作り出す
『命の行進曲』
作曲、わたし
演奏、わたし
生まれたてを抱き締めて
こっそり油を頂戴する
明日の続きは怯えより、期待が強くなる
生まれたての頃に見た
祖父のありがとうを思い出す
『今』を今食べる
失いやすいさり気なさで存在するから
逃さないように慎重に
丁寧に『今』を今食べる
あとどのくらい
『今』を食べることが
許されるだろうか