ねこのはなし
恋月 ぴの

ねこって可愛い
飼いねこは飼いねこらしく
ノラねこはノラねこらしい顔しているよ
やっぱし育ちなのかな
ひとに媚びるのうまい飼いねこがいて
いじらしいほどノラなねこがいる
そんなねこって
ほんとはさびしくて
あのひとに強く抱きしめて欲しいくせして
誰もいない原っぱの土管のなかで
ひとり身づくろいしてる

おなか減ってなんかいないよ

底冷えのする土管のなかで
飼いねこだったころを思い出してみる
ごはん食べられるのはあたり前で
おやつだって食べられた
あの頃
あのひとの差し出す指先に甘え
気が向けば
お酒くさい胸元へ忍び込んでみたりした

幸せって失ってはじめて気付くものなのかな

それでも
いまの暮らしだって捨てがたいものがある
ひとり気ままだし
あのひとの訪れをひたすら待つこともなくなったし

ねこって可愛い
冷たい北風の吹く夜空を仰げば
きれいすぎるくらいに星は瞬いていて
別れたひとの温もり恋しくて仕方ないのに
土管のなかでくるり丸くなり
ひとり
編みかけのマフラーなんか首に巻いて
メリークリスマス
もうすぐそんな季節だよ





自由詩 ねこのはなし Copyright 恋月 ぴの 2007-12-03 23:37:24
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