いつかの少年
服部 剛

日曜の床屋の順番待ちで
向かいに座る少年が 
ウルトラマンの本を開いて 
手強い怪獣の輪郭を指でなでる 

少年の姿に重なり 
うっすら姿をあらわす 
30年前の幼いわたし 

開いた本の舞台には 
荒地で向き合う 
ウルトラマンVSゼットン 

両者の間に広がる 
空色の空間に 
吸いこまれるように 
開いた本を覗きこむ 
いつかの少年よ 

大人になったわたしは今も 
日々の手強い怪獣に 
尻ごみしている 

寂しい気持で
誰もいない家に帰ると 
いつかの少年は
毎晩椅子に座っている 

秒針のが響く部屋で 
床に届かぬ両足を
振り子にして 








自由詩 いつかの少年 Copyright 服部 剛 2007-12-02 23:55:29
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