三の詩篇
乱太郎
一 踊る
螺旋状に回る時間の渦で
ときおり光り輝く瞬間
踊る鼓動が
今日を激しく興奮させる
あなたと
アゲハ蝶が絡み合う
異国に旅したその日付
落ち葉に乗った天使に
片言の挨拶をされて
知らなかったうれし涙を
掌に載せることを覚えた
それはどこかの病院の一室から
鼓膜を震わして
忘れないであろう
優しさに満ちた
今日という饗宴
踊る鼓動は
夕日よりも赤く
明日まで染めようとしている
二 十二の月
いにしえのはるか奥深い井戸から
凍えた眼差しで
今も君は僕を見つめている
忘れてはいないかと
亡霊となって彷徨う記憶は
もはや君の姿ではない
それでも
瞳に光る涙は
渇きもせずに夜を照らす
三 隣は
飛び跳ねたつもりでなかった
そこは小さな水溜りで
映った空が眩しかったので
ちょっと避けようとした
それだけだった
何も変わらないはずだったのに
底なし沼に沈んでいく
生い茂る草で見えなかったけど
水溜りの隣は
見えない未来だった