三の詩篇
乱太郎


 一 踊る

螺旋状に回る時間の渦で
ときおり光り輝く瞬間
踊る鼓動が
今日を激しく興奮させる

 あなたと
 アゲハ蝶が絡み合う
 異国に旅したその日付

 落ち葉に乗った天使に
 片言の挨拶をされて

知らなかったうれし涙を
掌に載せることを覚えた
それはどこかの病院の一室から
鼓膜を震わして

 忘れないであろう
 優しさに満ちた
 今日という饗宴

踊る鼓動は
夕日よりも赤く
明日まで染めようとしている





 二 十二の月

いにしえのはるか奥深い井戸から
凍えた眼差しで
今も君は僕を見つめている
忘れてはいないかと
亡霊となって彷徨う記憶は
もはや君の姿ではない
それでも
瞳に光る涙は
渇きもせずに夜を照らす





 三 隣は

飛び跳ねたつもりでなかった
そこは小さな水溜りで
映った空が眩しかったので
ちょっと避けようとした
それだけだった
何も変わらないはずだったのに
底なし沼に沈んでいく
生い茂る草で見えなかったけど
水溜りの隣は
見えない未来だった




自由詩 三の詩篇 Copyright 乱太郎 2007-12-01 13:50:40
notebook Home