十一月
楢山孝介

 「十一月」


数減るも巨大化していく女郎蜘蛛

雨風に吹かれ散ってく夢ゆめよ

あっという間に魔に墜ちる少年期

ちりとりに飛びこんでくる今日の死蛾

焼かぬのに灰にまみれて道の骸

コーヒーにミルクをそそぐ混ぜる飲む

鴨鴨鴨鴨の隙間に池があり

怪しげなうなぎの脂で腹重し

白波に洗われてゆく父の舟

白波に攫われてゆく僕の骨

月面やカメラのそとに姫がおり

周るのみかぐや故郷に降り立たず

かぐや撮る係累絶えし故郷の地

小春日や予報はどこも「夜冷える」

滞留し濁り澱める日々の澱

寒さ負けザムザ縮んで虫となる

寒さ来る何か想うと眠くなる

木枯らしや内ポケットに古い飴

黄葉に昂ぶる身内どこか立つ

コート着ると暑い

頭痛舌痛先夜の暖で身が弛む

八本の手足動かす四人組

指し示す昨日の虹はあのあたり

悪気なく木の葉の鬼を踏み潰す

懐かしや木の葉の裏に知った顔

大気澄む遠くのものが恐ろしき

大気澄む遠くの山の葉が落ちる

雲動く全ては常に過渡期なり



 「衛星『かぐや』から送られてきた月の映像を見て『劇場版ターンエーガンダム(地球光・月光蝶)』を思い出す」


月に降る消失前夜の地球光

海に降り鯨を肥やす月光蝶



 「欄外」


レイボーンSKワイバーンズ所属

借景に踏み込んでくる取り立て屋

亀に逢う二時間眺めて死に気付く

手書き詩に新種の真名が混じりけり

言葉には意志を伝える機能あり

離れるとそのことばかり考える

筋トレをやりすぎ体調崩す馬鹿

なぞなぞは眠たい時にすぐ解ける

貰い本全て重たしいつか読む

胸騒ぎ老いると生きるは同じこと

切れ切れの弔辞それでも伝わる意

創作欲睡魔と共にいつも来る

重い文読まぬと体調やたら良し


俳句 十一月 Copyright 楢山孝介 2007-12-01 11:25:55
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